立ち止まってじっと空を眺めることは出来るのだ。
病院の回復室の四角い窓。流れる雲に、時計にも何事にもとらわれない時間に、何もない、何も出来ない自分をぼんやりと乗せていたあの頃。
今から考えれば短い期間だったかもしれない。けれど、それからの長い長い長い人生にとってなくてはならない時間になった。あの時間があったからこそ、今の自分は走り続けられるのだと思う。
またいつか立ち止まりたくなっても、また再び走れるのだと思う。
あの時間は私の大切な財産になった。
他人にはうまく説明できないし、必要ないものかもしれないけれど、自分だけの宝物になった。
そして時折ふと思い出す。
確かに失ったものはたくさんある。今はその失った隙間に新しい幸せとか時間とか、そういうものを集めるために走っているのかもしれない。またいつか隙間が少し増えることがあったとしても。
忘れないでいよう。