2001年の、夏の記憶がほとんどありません。
６月に持病の症状が悪化してから、９月に入院するまで、ずっとずっと寝たきりのような生活をしていました。
昼間はソファに横たわって、横向きのテレビを見て、一日に何度かやってくる腹痛に怯えて、家族に知られないように小さく呻くときもありました。
その前の年も、夏の思い出はありません。７月にみるみる症状が悪化し、激しい腹痛と、下血と、脂汗と、真夏なのに酷い寒気と、吐き気。食べ物がほとんど喉を通らなくなり、一ヶ月でみるみる痩せ、入院すると「栄養失調」だと言われました。
足を一歩踏み出すたびにお腹にズキズキと響いて、腰を曲げたまま、手摺りにしがみつきながら、病院の廊下を歩いた記憶があります。
あの時に比べたら……あの長い長い時間があったからこそ、今の私は元気でいられるのです。いくらでも前に進めるのです。体に治りの悪い傷を抱えていても平気なのです。
身近な人間に、「まともじゃない」と言われました。
じゃあ、「まとも」って何ですか？
普通に学校を出て、普通に就職して、普通に結婚して…それが「まとも」？
じゃあ、意図せずそれが出来なかった人は皆、「まともじゃない」の？
だったら私はどうすればいいの。
だったら私は、死ぬまでこの「まともじゃない」体と人生を抱えて、笑いながら最期まで生きてやりますよ。
死ぬまで恋して、誰かのために、誰かと一緒に生きてやりますよ。
もうあの人には、何も打ち明けられないな。
